脊髄刺激療法 Spinal Cord Stimulation(SCS)
- 脊髄刺激療法(SCS)は、慢性疼痛の治療の1つです
- 脊髄に微弱な電気を流すことにより、痛みを和らげます
- 電気は、脊髄硬膜の外側に留置した電極から流します
- まず、トライアル(試験刺激)を行い、効果があれば刺激装置の植込手術を行います
- 手術は直接脊髄神経に触れるものではありません
- SCS開始後は、患者さん一人一人に合わせて、刺激を調整します
- 患者さん自身も、専用リモコンを用いて、電気の強さを調節することができます
脊髄刺激療法 (SCS 療法 ) が適応となる患者さん
腰、手足に慢性難治性の痛み、しびれがある患者さんが対象になります
具体的には、下記のような症状の方は効果が期待できます
- 手術後も、痛みやしびれが残っている
- 根治治療ができない
- 薬物治療の効果が不十分
- 薬の副作用が強く、薬を減らしたい
- 神経ブロックの効果が長続きしない
- 痛みやしびれが強く、日常生活やリハビリに支障が出ている
適応となることが多い病気
実際の適応となる患者さんに多い病気は下記です
- 脊髄手術後疼痛症候群(脊髄手術後も痛みやしびれが残っている)
- 腰部脊柱管狭窄症
- 脊椎手術が困難な神経根性疼痛(圧迫骨折、パーキンソン病)
- 脊髄損傷
- 癒着性くも膜炎
- 局所疼痛症候群(原因と不釣り合いな激しい痛み)
- 末梢動脈閉塞症(手足の血流が悪いための痛み)
- バージャー病、レイノー病
- 糖尿病性神経症
- 腕神経叢損傷
- 四肢切断後の断端痛、幻肢痛
- 帯状疱疹後
- 脊髄損傷後
- 脳卒中後
脊髄刺激療法 (SCS 療法 ) の流れ
- 外来で、診察、MRIによる脊髄の検査を行います
- 1回目入院(7-10日)トライアル(試験刺激)を行います(局所麻酔)
- 入院中または外来で効果判定し、植込手術を行うかどうか決定します
- 痛みが半分になれば、効果ありと判定しています
- 2回目入院(7-10日)刺激装置の植込手術を行います(全身麻酔)
- 必要があれば、外来で電気刺激の微調整を行います
脊髄刺激療法 (SCS 療法 ) で使用する機器
- トライアルでは、一時的に電極を脊髄硬膜外に留置します
- 期間が終われば、抜去します
- 効果があり、植込手術を行う場合は、電極(リード)と刺激装置を植込みます
- 電極は脊髄硬膜外、刺激装置は腹部の皮下脂肪内に植込みます
- 植込手術後は、刺激装置の充電を体外から行います(数日~1週間に1回)
- 充電の頻度は消費電力によって異なります
- リモコンは、基本的に患者さん本人が使用して、電気の強さを調整します
植え込む機器
体外から使う機器
脊髄刺激療法(SCS療法)の効果
- SCSは、痛みを和らげたり、まぎらわせることは可能です
- 低頻度刺激では、心地よい刺激が痛みの範囲に重なり、痛みを緩和します
- しかし、痛みを100%消失させることはできません
- また、すべての人に効果があるわけではありません
- 私共の経験では、7割くらいの患者さんに効果があります
- 痛みが和らぐことで、動きやすくなったり、ぐっすり眠れたりするなど日常生活の質が向上します
- 痛みに対する薬を減量できる可能性があります
- SCSの効果は、長期間にわたって続くことが期待できます
脊髄刺激療法 (SCS 療法 ) で起こり得ること
- 大きな手術ではありませんが、出血や感染の危険性はゼロではありません
- 後遺症が残るような重篤な合併症は極めて稀です
- 稀ですが、電極のズレ、断線を生じることがあります
- 体の向きによって、刺激を感じにくくなったり、強く感じすぎる場合があります
- ただ、リモコン操作で調節可能であり、自動調節を設定することもできます
- MRIは撮影可能です。(設定変更が必要です)
- 金属探知機にかかることがあり、このときは患者カード/手帳を提示する必要があります
トライアル(試験刺激)の重要性
- 刺激装置の植込みを行わなくても、SCS療法の効果を体験することができます
- ただし、電極の一時留置は必要です(局所麻酔)
- トライアル期間中に複数回、刺激の調整を行うので、様々な刺激を体験できます
- 患者さん一人一人、効果が異なるので、より自分に合った刺激をさがすことが大事です
- デメリットとして、入院が2回になってしまうことが挙げられます
トライアルでの効果判定
- 痛みがゼロになることはありません
- 痛みが半分になれば、効果ありと判定しています
- SCSの刺激を不快に感じる場合は、効果なしと判定します
- ただし、高頻度刺激パターンにした場合は、刺激を感じなくすることができます
- トライアル期間中に判定できない場合も、よくあります
- このときは、退院後に外来にきていただいて、再度相談をします
- SCS刺激がなくなった状態を再び体験することにより、判定がしやすくなります
刺激パターンについて
大きく分けて、2種類の刺激方法があります
①低頻度刺激(5-50Hz)
- 1秒間に5-50回の刺激が入ります
- 者さんは、刺激感を感じます(トントントン ザーザーザーなど)
- 痛みのある部位に心地よい刺激感が出て、痛みを和らげます
- 体の向きで刺激が変わるので、リモコン操作または自動調節の設定を行います
②高頻度刺激(100-1000Hz)
- 非常に高頻度で刺激するため、刺激を感じることはありません
- 刺激感を感じなくても、痛みを和らげることが可能です
- 電力消費量が多くなります